ShigeRokuBlog

アニメ・マンガ・映画――ポップカルチャー全般を語る日記。

「冷たい熱帯魚」を観た

 

冷たい熱帯魚 [Blu-ray]

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 園子温監督の『冷たい熱帯魚』を観た。園子温作品はこれまでまったく観たことはなかったが、後輩飲み会の席で「園子温作品が好き」だというので、最も有名な本作を観た。金属バットで頭を殴られたような強烈な映画だった。

園子温監督に対してはなんとなく「狂気系」なイメージを持っていたが、想像以上に狂っていた。血を連想させるようなタイトル表示など、序盤から不穏な雰囲気がプンプンしていたが、死体の解体シーンにはさすがに驚いた。肉片や内蔵など包み隠さずモロに見せるとは……。凄惨な現場と嬉々として解体する村田夫妻のギャップも凄まじく「怖い」を通り越して笑けてきた。だんだんの怪演が凄い。

本作を観て強く思ったのは、主人公・ 社本信行のような生き方はしたくないということ。社本は日本人には多い受け身タイプな人間でありけっこうシンパシーを感じる。
それに対して村田幸雄は、頭がイカれた極悪人ではあるものの、自らの欲望を叶えるために主体的に行動を起こしていくところは見習いたい。他人を利用し蹴落として生きているからこそ、金や女を欲しいままにしている。社本と村田の対比が観ていて面白かった。

グッときたのは、社本が初めて村田に反抗する場面。死体処理を手伝わせるときに、村田は社本の妻を寝取ったことを明かす。さらに追い打ちをかけるように「お前は流されてるだけの人間で主体的な行動は何ひとつしてこなかった。それに比べて俺は自分の力で他人をねじ伏せてきたんだ」的なことを言う。やってることは異常なのにこの意見は的を射ている。社本に対するセリフではあるが、視聴者である我々への挑発でもある。社本が村田に殴りかかったときは、それまで抑えこまれていたのもが一気に解放された快感があった。

本作がかなり面白かったので、次は園子温監督の代表作である『愛のむきだし』を観てみたい。