ShigeRokuBlog

アニメ・マンガ・映画――ポップカルチャー全般を語る日記。

0930

■『心が叫びたがってるんだ。』

映画『こころがさけびたがってるんだ』を観てきた。『あの花』メインスタッフがまた青春群像劇をつくるということで、「あんな感じだろう」と予想していたけど、良い意味でかなり裏切られた。

あの花』に比べると岡田麿里色が濃厚。冒頭のラブホのくだりや、とあるカップルの逢引など生々しい描写が多い。CMやPVが爽やかなイメージだったので、全然違うなーと。

より驚いたのは、ラスト、成瀬順と坂上拓実がくっつかないこと。この作品は「声」を失ってしまった順と、彼女を導く拓実との交流が縦軸となっている。終盤、声を取り戻せるかのように思えた順に再び試練が訪れるのだが、ありがちな映画だと、ここで順が成瀬に告白して「めでたし、めでたし」になる。でもこの作品はそうはならならなくて、新時代の「ボーイ・ミーツ・ガール」といった感じ。

あとは単純に成瀬順が可愛らしくてよかった。声は出せないけど、思ってることはすぐ表情に出るし、オーバーリアクション気味でまるで小動物のよう。それだけに拓実と結ばれないラストはかわいそう。彼女の幸せは祈るばかりである。

けっこう尖ったことをやってるけど、青春群像劇の醍醐味は充分にあった。キャラ配置も王道でありながら、それぞれのキャラクターはステレオタイプではなくちゃんと奥行きがあってよかった。

またこの座組でアニメ映画をつくってほしいところ。

「CURE」を観た

 

CURE キュア [DVD]

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 黒沢清監督作『CURE』をHuluにて視聴。連続猟奇殺人事件を追っていくサスペンスではあるが、テイストとしては「Jホラー」っぽかった。暗いトーンの画面、得体の知れない何かが感染していく感じなどまさにJホラー。「CURE」=「癒やし」というタイトルとは正反対で、良い意味で期待を裏切られた。

公開日が1997年ということもあって、90年代特有の未知なものに対する不安のようなものがビンビンであった。萩原聖人演じる間宮邦彦がその象徴だろう。凄腕の催眠術師でありながら、その実態はよく分からない。その分からなさが恐怖を誘っている。
間宮とは何だったのか? なぜ高部は“伝道師”となってしまったのか? 疑問が多く残る映画だったので、いろいろと解説を読みたい。

「時をかける少女」を観た

 

時をかける少女  ブルーレイ [Blu-ray]

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 レンタルにて『時をかける少女』を観た。細田守によるアニメ版ではななく、大林宣彦監督が1983年に監督した実写版のほうだ。今第一線で活躍しているアニメクリエーターが強く影響を受けていたらしく、「アイドル映画の金字塔」という評価もよく聞くので、抑えておこうと。また角川映画の雰囲気をなんとなく知っておきたかった。

率直な感想としては、正直なところあんまり刺さらなかった。細田版の『時をかける少女』は当時絵コンテ本にサインをもらいにいくほど琴線に触れたのだが……。アニメ版のようにタイムリープ能力を使いまくるのかと思いきや、本作の主人公・芳山和子は能力を自らの意志で使うのはクライマックスのたった一度だけ。細田版は序盤から能力を乱用してテンポ良く映画が進行していくが、実写版だと和子が真面目な性格なので未知なる力に怯え苦悩するだけ。あまりにかったるかったので、途中から早送りで観てしまった。

特典のインタビューで大林監督の発言にあるように、本映画は物語うんぬんというよりも、アイドル・原田知世の魅力を見せるための映画なんだと思う。だけれども、正直、原田知世演じる芳山和子に魅力をあまり感じられなかった。これを言ったら身も蓋もないが、そもそも原田知世を可愛いと感じられなかった。これは世代のギャップによるところが大きいが、事実なのでしょうがない。大林監督は原田知世のことを「背筋がしゃんと伸びた古典的な美少女」と称していたが、現在の美少女観とは大きくかけ離れている。

中盤にかけて退屈に観ていたのだが、物語のタネ明かしについては素直に驚いた。未来人によって和子の記憶が書き換えられていたことについては、「『GHOST IN THE SHELL』の清掃員とおんなじじゃん!」と少々複雑な気持ちに。でも、何だかんだ言って「アナタのことは絶対に忘れない!」という和子の健気な姿には否応なく心を打たれてしまう。ラスト、成長したふたりが互いをちゃんと覚えていてハッピーエンドかと思いきや、気付かずにすれ違ってしまうのは意外だっった。大林宣彦監督も明言していたように、悲劇として描かれている。「ハッピーエンドでいいじゃん!」と思う反面、悲劇のままのほうが和子の純粋な気持ちが研ぎ澄まされる感じで、それはそれでありなのかもしれない……。

本作は当時大ヒットしたらしいが、なぜそこまで人気があったのかよく分からない。調べてみよう。

「DEAD OR ALIVE 犯罪者」を観た

 

 1999年三池崇史監督作『DEAD OR ALIVE 犯罪者』を観た。前情報で「ラストが凄い」と知っていたのだが、斜め上方向にぶっ飛んでいたラストで度肝を抜かれた。それまで真面目に観ていたのがバカらしくなるほどであった。キャッチコピーを調べてみたら「フツーに生きたいなら、このクライマックスは知らない方がいい。」とある……。

三池崇史の作品を観るのは本作が初めてなので、他作品と比較することはできないが、これまで観てきた映画の中ではクエンティン・タランティーノに近い感じ。暴力とセックスをストレートに描写したり、猥雑な感じが共通している。
舞台は日本ではあるが、メインキャラクターが中国残留孤児だったりして、テイストとしてはチャイニーズマフィア映画。また哀川翔竹内力のダブル主人公なのでVシネっぽい雰囲気もあった。

マフィアものではありがちな物語でそこまで面白くはなかったが、とにかくラストが衝撃的な映画だった。

「冷たい熱帯魚」を観た

 

冷たい熱帯魚 [Blu-ray]

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 園子温監督の『冷たい熱帯魚』を観た。園子温作品はこれまでまったく観たことはなかったが、後輩飲み会の席で「園子温作品が好き」だというので、最も有名な本作を観た。金属バットで頭を殴られたような強烈な映画だった。

園子温監督に対してはなんとなく「狂気系」なイメージを持っていたが、想像以上に狂っていた。血を連想させるようなタイトル表示など、序盤から不穏な雰囲気がプンプンしていたが、死体の解体シーンにはさすがに驚いた。肉片や内蔵など包み隠さずモロに見せるとは……。凄惨な現場と嬉々として解体する村田夫妻のギャップも凄まじく「怖い」を通り越して笑けてきた。だんだんの怪演が凄い。

本作を観て強く思ったのは、主人公・ 社本信行のような生き方はしたくないということ。社本は日本人には多い受け身タイプな人間でありけっこうシンパシーを感じる。
それに対して村田幸雄は、頭がイカれた極悪人ではあるものの、自らの欲望を叶えるために主体的に行動を起こしていくところは見習いたい。他人を利用し蹴落として生きているからこそ、金や女を欲しいままにしている。社本と村田の対比が観ていて面白かった。

グッときたのは、社本が初めて村田に反抗する場面。死体処理を手伝わせるときに、村田は社本の妻を寝取ったことを明かす。さらに追い打ちをかけるように「お前は流されてるだけの人間で主体的な行動は何ひとつしてこなかった。それに比べて俺は自分の力で他人をねじ伏せてきたんだ」的なことを言う。やってることは異常なのにこの意見は的を射ている。社本に対するセリフではあるが、視聴者である我々への挑発でもある。社本が村田に殴りかかったときは、それまで抑えこまれていたのもが一気に解放された快感があった。

本作がかなり面白かったので、次は園子温監督の代表作である『愛のむきだし』を観てみたい。

雑記08/17

 ■ウーキング・デッド
Huluにて海外ドラマ『ウォーキング・デッド』を2話まで観た。ゾンビが蔓延した世界、歩くゾンビ、極限状態における人間同士の争いなど、ゾンビものとしては極めて正統派な印象。きっちりとつくられてはいるけど、「『ゾンビもの』をTVドラマにしたらこうなるよね」と大方予想通りの内容。なので正直言って新鮮さは無かった。これ以上は観続ける気力はない。

「ハウス・オブ・カード 野望の階段」を観た

 

 Huluの2週間無料トライアルに登録したので、この機会に海外ドラマに手を出してみようと試しに『ハウス・オブ・カード』を観てみたら、これがメチャクチャ面白かった。その前に観た『24』は3話ぐらいで挫折してしまったが、『ハウス・オブ・カード』のほうはとにかく面白くて一気に最後まで観てしまった。

宇多丸ネットラジオの「海外ドラマ特集」で本作がオススメされていて、観る前の期待値は高かった。フタを開けてみたら予想以上に面白かった。本作をかなりざっくり説明すると、「デヴィット・フィンチャーがプロデュースした海外版『半沢直樹』だ。主人公はホワイトハウス入りを目指すアメリカの下位議員・フランクで、自分を裏切ったヤツへ復讐を遂げるため、策謀をめぐらし、他人を蹴落としながら標的に近づいていく過程が描かれる。

本作の魅力はなんといってもフランクのキャラクター性だ。自らの野望のために、ときには非情な手段も辞さないあたり、出崎統の傑作アニメ『宝島』のジョン・シルバーと重なってみえた。僕はどちらかと「現状維持」に陥りやすいタイプの人間なので、こういう野心満々で行動力に溢れるキャラクターに強い憧れがある。本作を観てると「うかうかしてられねーぜ」という気分になる。

あと、映像がとにかくカッコいい。デヴィット・フィンチャーがプロデュースしていることもあり全てのカットが映画的。安っぽいドラマでありがちなカメラを無駄に動かしたり、説明的なセリフもほとんどない。何気ない会話シーンでもカット割りがしっかり決められている感じがする。それが全12話で徹底されているのが凄い。これだけレベルの高さを見せつけられると日本のドラマなんてまったく観る気がなくなってしまう。

これまで海外ドラマはまったく観てこなかったが、本作がかなり面白かったので、けっこう興味が湧いてきた。まずはシーズン2を早く観て、ほかの作品にも手を出してみたい。